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ウエッジウッドが経営破たん [紅茶]


世界的な経済危機の波がここにも・・・

1月5日、衝撃的なニュースが流れました。

(イギリス共同通信の記事より)
英国の高級洋食器「ウェッジウッド」などのブランドで知られる大手陶磁器メーカー、ウォーターフォード・ウェッジウッド(本社アイルランド)は5日、英国事業が近く管財人の管理下に入る見通しになったと発表、事実上経営破たんした。金融危機をきっかけとした世界的な景気悪化で販売不振に陥ったのが原因。安価な陶器に顧客を奪われたことも経営の重しとなった。

理由は本当に、ここに書かれていることだけなのでしょうか。

このニュースが流れ、驚いてBBCニュースをチェックしてみましたが、報道されていた内容は共同通信とほぼ同じでした。

インタビューに答えていた英国婦人数人は異口同音で「英国の誇り、英国の文化、英国の陶器を残したい」と言っていました。

しかし、ここ数年、ウエッジウッドのB級品以下の商品が、スーパーマーケットやディスカウントストアーで販売され、驚くような低価格で流通するようになっていました。

併せて、エプロンやハンカチ、タオル類など、陶器とは無関係のものまで社名の冠をつけてたくさん販売するようになっていました。

私たち庶民にとって、手の届くところにあるようになってしまった世界の一流品は、本当の意味での一流品とは言えないのではと感じはじめている人もいたのではないでしょうか。

日本には階級社会がありません。
ですから、その階級という意味を理解するには、経験と時間が必要です。

たとえば・・・・・・ヨーロッパで一流ホテルに泊まる人は、一生一流ホテルに泊まります。それに対し、二、三流ホテルに泊まる人はこれまた一生これらのホテルに泊まるのです。三流ホテルに泊まるひとが一流ホテルに泊まるようになったら、ヨーロッパ社会は瞬時に崩れてしまうでしょう。

ヨーロッパにおいて一流ホテルに泊まるにはお金があるだけではなく、人格、教養、定見全てが一流でなければならないのです。もちろん、装身具も含めて身の回りの物も全て一流でなければいけません。

しかし、日本人はお金さえ払えば、ツアー会社が一流ホテルを予約し、大型観光バスで一流ホテルにお客さまを運び、ジーパン姿でホテル内を闊歩する、そんなヨーロッパでは考えられないような事態が生まれてしまうのです。

ウエッジウッドも、そんな日本人の心理を上手に利用し、市場の拡大を行ったのでしょう。
おそらく、アメリカでも同じような市場開拓をしたのではないでしょうか。

陶器だけではなく、商品の幅を広げすぎた故の失敗とも思える経営破たんが残念でなりません。

     [喫茶店][喫茶店][喫茶店]


私は、1992年に初めて英国を訪れた時、ウエッジウッドのマグカップを2個購入しました。
大切な思い出の品です。

     DSC05526.jpg

その後、紅茶の仕事をしていたにもかかわらず、ヨーロッパの貴族社会そして階級社会を知れば知るほど、ウエッジウッドが我が家に不釣合いに思えて、未だカップ&ソーサーを買っておりません。

250年続いたウエッジウッド社の陶器が、一流として存続していくことを心から願い、いつか我が家の食器棚にウエッジウッドのティーセットを揃えたいと思っています。

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コメント 14

ララアント

おはようございます。

ウエッジウッド社の経営破たん・・・ニュースをみて ただただ
驚いていただけですが・・・
SUMAKOさんの噛み砕いた解説を読んでいて 英国社会も
大変な時代に突入したのだと感じました。

古き良き英国を残していくのは至難の業になりつつあるのかも
知れませんね。
でも いろんな意味で 次の世代に残していかなければならないものは
確実に残していって欲しいものだと感じました。(日本も同様ですね)

朝から SUMAKOさんの投げかけてくださる記事に反応し
随分 頭を使いました。・・・ありがとう!!
by ララアント (2009-01-08 08:31) 

marilyn

おはようございます。わたしも、あら、破綻!と思っただけだったんですが、SUMAKOさんの記事でいろいろ背景を考えさせられました~。
伝統のあるものは、商業主義に流されずやっぱり、きちっと次世代へ残してほしいですね。
一流というのは、お金のあるなし、身分に関係なく、きちんと生きるポリシー、誇り、周りに対する思いやりを持てる人!って思ってるんですが、ヨーロッパでは、生まれがだめだと駄目なんですかね~。厳しい社会!
SUMAKOさん、こういう記事割と好きです~
by marilyn (2009-01-08 09:32) 

もとこさん。

SUMAKO様、はじめまして。miopapaさんから参りました。どうぞ宜しくお願い致します。

私は常々一点豪華(主義?)こそ貧しさの象徴と思っておりますので、共感しながら読ませていただきました。
by もとこさん。 (2009-01-08 10:30) 

はる

今年もよろしくお願いいたします。

トラックバックを送信したのですが、ダメだったようです。

商業主義に走り、伝統を大切にする心を忘れてしまったのは、他国の企業のセイではないかとおもいます。

イギリスは英国らしいやりかたで、きっと立ち直らせてくれると信じています。
by はる (2009-01-08 10:37) 

miki

ヨーロッパの階級社会ってそんなにもはっきりしたものなのですね。
いわゆる上流階級の人たちの確固たる存在が、実用本位でないこだわりの製品を生む条件なのかも。
だとすれば、なにがあっても伝統は守られてゆくでしょう。

ところで、エプロンやタオルは本国での販売はあるのでしょうか。
ブランド好きの日本での経営戦略として、ライセンス契約を結んだのではないかしら。
電車男がマドンナから最初にもらったのは、エルメスのカップソーサーでした。先日いただいた引き出物はティファニーのワイングラス。
イギリスのブランドに限らず、なんでもあってびっくりしてしまいます。

by miki (2009-01-08 21:56) 

SUMAKO

ララアントさま
朝からこんな堅い話題でごめんなさい。
でも、歴史あるウエッジウッドのファンとしてはとても残念で、何としても生き残って欲しいと願っています。
そのためにも、もう一度一流としての信用とプライドを持ちなおす必要があるようにも感じます。
資本主義の商業ベース社会で、本物を残していくということの難しさを感じます。
by SUMAKO (2009-01-08 23:23) 

SUMAKO

marilynさま
私たち日本人が考えている以上に、英国の階級社会は厳しいものだと思います。かつて浅岡敬史さんが「ヨーロッパは階級なき社会を求める階級国家の集合体である」と本に書いておりました。
現在でも、労働者階級、中産階級、そしてその上の上流(貴族)階級の人が買い物をするスーパーは暗黙のうちに別れています。だからと言って、誰がどこで買い物をしても罪に問われることはないのですが、見えない壁で仕切られているのでしょう。その方が怖いような気がします。

英国はスポーツを考えても、結構シビア。サッカーは労働者階級のもの。ですから、上流階級の子息はサッカーはしません。クリケット、テニス、ゴルフになるのでしょう。インドやスリランカなど、英国の植民地だった所でも、家柄と身分の高い家の子どもは、サッカーはやりません。
日本ではサッカー、テニス、ゴルフの選択肢は並列ですから、考えたこともありませんよね。
ベッカムがどんなに人気があり、外貨を稼ぎ、頑張っても、貴族にはなれないのです。貴族の称号は世襲制。彼に与えられたのは、サーの称号で世襲制ではない、貴族の称号以下のもの止まりです。

何だか陶器から英国の階級社会の話に飛んでしまいましたが、そのくらい目には見えない厳しい社会があるということが伝われば嬉しいです。



by SUMAKO (2009-01-08 23:42) 

SUMAKO

もとこさま
はじめまして。どうぞよろしくお願い致します。
共感していただき、とても嬉しく思います。ありがとうございます。

12年ほど紅茶の仕事をし、通信教育で紅茶講座の添削を担当していたことが8年ほどありました。その講座の最後が、自宅で開くティーパーティー。皆さん、カップ&ソーサーやティーポットは立派なものをお持ちなのですが、テーブルクロスがビニールだったり、買ってきたケーキを箱のままテーブルに置いたり、ナプキンがペーパーだったり。どうしてこうなってしまうのか、理解できないことが多かったことを記憶しています。

書いていただいたように、貧しさの象徴、そして文化の低さに他ならないと思いつつ、それを指摘することもできず、矛盾だらけの紅茶の世界から足を洗いました。

もとこさんのブログを拝見させていただき、これから少しずつ勉強させていただこうと思います。
どうぞよろしくお願い致します。

by SUMAKO (2009-01-08 23:51) 

SUMAKO

はるさま
こちらこそ、どうぞよろしくお願い致します。
トラックバックの件は、調べてみます。すみません。

私も何としてもこの歴史と文化を受け継ぎ、大切に守っていって欲しいと願っています。
お気に入りの器でゆっくりとお茶を楽しむ、これこそが至福のひと時ですものね。
by SUMAKO (2009-01-08 23:54) 

SUMAKO

mikiさま
ここ数年、英国を訪れていないので分かりませんが、本国でタオルやエプロンを見た記憶は全くありません。
おっしゃるとおり、ライセンス契約を結び、日本のメーカーが作ったものなのではないでしょうか。

引き出物やプレゼントで、ロゴマークのついた器をいただくことは嬉しいような、どうしたらよいのか少々複雑です。日常生活で使う、マグカップであれば消耗品ですし、バラバラでも問題はないのですが・・・・。
まずは、日本人の洋食器に対する考え方を根本から見直すことが必要なのかも知れません。そして、一流の食器をそろえたら、リネン類もそれにあわせるという文化も持たないといけませんよね。
その前に、自分自身の品格も大事かも・・・。
by SUMAKO (2009-01-09 00:03) 

asayan

本当に大変な世の中になってきましたね。
ウェッジウッドは、確かに庶民のものになってしまって、誰も見向きしなくなった感がありますよね。
ボクが学生の頃はまだまだ高嶺の花で、憧れもありました。

昨年のスタッフの誕生日にはウェッジウッドの1万円マグカップがプレゼント定番でした。
少し寂しいですね。

でも、どこかの会社が必ず身請けするのでしょうけど・・・。
by asayan (2009-01-09 01:17) 

杏珠

驚きのニュースでした。
安価な商品に押されたという記事もあり、フランスでフランス産ワインの売り上げが落ち、ワイナリーが減りつつあるというニュースを思い出しました。
もちろん世界的な販売不振ということもあるのでしょうが、自国の誇りと言える製品が自国で売れないという現象が起こることの恐ろしさを感じます。日本でも同じことが言えると思います。
by 杏珠 (2009-01-09 21:54) 

SUMAKO

asayanさま
世界中に経済危機の波が広がり、これからどのようになっていくのか、本当に不安です。
日本の内閣も、総理大臣の支持率は下降するばかり。
安心して暮らしていける世の中になって欲しいですね。

asayanさまの部下の皆さまは、とっても幸せ。お誕生日を上司やオフィスメイトに祝ってもらえるんですものね。誕生日はその人にとって特別な日。家族以外の誰かが覚えていて、お祝いしてくれる、それだけでまた1年、いいことがありそうなそんな気持ちになりますよね。
スタッフの皆さんへのasayanさまのお心遣い、素敵ですね。
by SUMAKO (2009-01-09 23:13) 

SUMAKO

杏珠さま
本当にそうですね。日本の企業も直面している問題なのかもしれません。
今、国民は皆将来に不安を抱え、当面のお金がないわけではなく、お金を使わなくなっているのでしょう。その繰り返しが、悪循環を生み、生産現場での仕事がストップする事態を招いているのではないでしょうか。
今の状態では、自分の将来や老後は、自分の力で何とかせねば、と思うあまり、自己防衛に走ってしまいますよね。
by SUMAKO (2009-01-09 23:17) 

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