SSブログ

「冷い夏 熱い夏」 [ブックレビュー]


日本人の生死観とは


吉村昭氏は、年月を費やし、緻密かつ丁寧に仕上げた作品が多いと思います。

以前から1度読んでみたかった作品です。

     DSC08717.jpg

内容(「BOOK」データベースより)
何の自覚症状もなく発見された胸部の白い影―強い絆で結ばれた働き盛りの弟を突然襲った癌にたじろぐ「私」。それが最悪のものであり、手術後1年以上の延命例が皆無なことを知らされた「私」は、どんなことがあっても弟に隠し通すことを決意する。激痛にもだえ人間としての矜持を失っていく弟…。ゆるぎない眼でその死を見つめ、深い鎮魂に至る感動の長編小説。毎日芸術賞受賞。

  **********

この作品は、昭和50年代の出来事を、平成2年に書き下ろしたものなので、医学の進歩がめざましい現代に全てが当てはまるものではありません。

「癌=死」という時代でもなくなり、本人への告知もごく当たり前のようになってきています。

しかし、日本人の生死観が医学の進歩ほど変化しているとは思いません。

事実、夫の実家と私の実家では、考え方が正反対です。

義父は3年前の春、脳腫瘍と肺癌で亡くなりました。
しかし、本当の病名は本人に明かされることもなく、手術は家族の同意だけで行われ、入院から3週間で旅立っていきました。

私の母は、乳癌で片胸をリンパ節まで摘出し、抗がん剤の治療の期間も終わり、76歳の今、1日1日を大切に元気にしております。

また、79歳の父は2年前の夏、心筋梗塞で倒れ、その時に大腸ガンが見つかり、S字結腸を摘出しました。
その後すい臓への転移も医師より指摘されていますが、本人の意志により、抗がん剤治療などは一切行っておりません。

自分のことは自分の意思で決める、そのような考え方の中で育った私にとって、夫の実家の家族の感覚を受け入れるのに大変時間がかかりました。

この本を読むまで、「癌の告知」についての考え方の違いを理解できていなかったのかも知れません。

日本人の3人に一人が癌になる今、家族がそうなった時、また自分がそうなった時にどうすることが良いのか、考えておく必要があるのではないでしょうか。

そのことを考えるための題材として、この本は素晴らしい作品だと思います。

もしも自分自身が癌告知をされたら、平常心でいられるのか甚だ疑問ではありますが・・・。

     DSC08443.jpg

先日、鎌倉・建長寺で見た夕日です。
毎日の当たり前の出来事を、普通に過ごす事ができる、それが一番の幸せなのかも知れません。

nice!(12)  コメント(11)  トラックバック(0) 

nice! 12

コメント 11

kei

うちの爺さま(母の父さん)も腸ガンです。半年前発病し、医者さんは高か1年ぐらいしか残っていませんと伝えてくれました。でも、両親はまだ本人に言っていない。

私はsumakoさんの意見を賛成します。ガンはけっして「終わる」に等しくない。事実を受け入れ、戦う! 人は生きている限り戦うものだと思います。
by kei (2009-11-12 01:13) 

crea

おはようございます^^
この問題って難しいですね。。。
自分自身のことと考えると、告知されてしまうと気弱になっちゃいそうな
気がします。人って意外ともろいですもんねー(><)
でも、何かをやり残したまま・・・っていうのも微妙なので、やはり告知して欲しいかなー。。。
本当に健康が全てですよね。それだけで人って幸せなのだと思います。
by crea (2009-11-12 08:04) 

sayudom

SUMAKOさんのご両親、大変ですね。
寒さが身にしみる季節になってきたので、今まで以上にお体を大切になさって下さい。

難しい問題ですね。
私は告知してほしい派です。
両親、家族はどう考えているんだろう。話しあった事はありませんが。

死に直面する事があまりないので他人事のようですが、
人はいつかは死を迎えるんですもの。
それが病気か、事故かはわかりませんが。

ガンに限らず、自分の病気は理解しておくのも必要な気がします。
by sayudom (2009-11-12 08:04) 

袋田の住職

建長寺からも海が見えるんですね!
by 袋田の住職 (2009-11-12 21:45) 

SUMAKO

keiさん
癌の告知は難しい問題です。
ご本人が元気なうちに、強く希望があれば告知もひとつの方法だと思います。しかし、そうでなければ、逆効果になる場合もありますよね。
おじい様、どうぞお大事になさって下さいね。
by SUMAKO (2009-11-13 19:02) 

SUMAKO

creaさん
とても難しい問題です。
健康な時は心も元気。でも、体のどこかが具合が悪くなると、心も共にもろくなります。そうなっている時に告知されたら・・・。
でも、真実を知り、自分の残された時間を大切に使いたい、私はそのように考えます。
by SUMAKO (2009-11-13 19:04) 

SUMAKO

sayudomさま
高齢の親がいると、何かと心配が多くて。
でも、それは我が家に限ったことではありません。幸い、3人いる親は今のところ、日常生活に介護が必要ではなく、年相応の元気があります。
それだけでもありがたいことだと思います。

病気の告知は難しい問題です。
でも、自分自身のことであれば、真実を知りたいと思います。
限られた命、大切にしたいですから。
今、この時間を無駄にしないように・・・です。
by SUMAKO (2009-11-13 19:08) 

SUMAKO

袋田の住職さま
奥の院のそのまた奥の山の上です。
富士見台という見晴らし台があり、そこからの眺めは素晴らしいですよ。
by SUMAKO (2009-11-13 19:08) 

袋田の住職

なるほど、山門のあるあたりの境内からでは見えないですよね。
吉村さんの本昨日買いました。
袋田に縁のあるものです。
by 袋田の住職 (2009-11-14 07:31) 

向日葵

誰もが逃れられない「死」と言うもの。

「死病」とすら言われる「癌」にまつわる話。

とても難しいシリアスな話ですね。
それだけに「今生かされている幸せ」をよりしっかりとー!
by 向日葵 (2009-11-14 17:59) 

SUMAKO

向日葵さま
今生かされている幸せ~正にその通りですね。
たくさんのことに感謝しなければいけませんね。
by SUMAKO (2009-11-14 22:48) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

パキスタン段通電気ひざかけ ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。